うつぶせ寝容認論 90年代前半

シンポジウム うつぶせ寝 <是か否か>のなかで

 あおむけ寝(背臥位supine position)、うつぶせ寝(腹臥位prone position)のいずれを好むかは、 医学的なデータに基づいたものではなく、習慣によるものと云われている。しかし、未熟児新生児 医療の中では、ピエールロバン症候群、胃食道逆流現象・頭頚部手術の術後および無呼吸発作の危 険のある児の管理にはうつぶせ寝があおむけ寝よりも優れていることが医学的に証明されている。  わが国では、長い間むしろ、あおむけ寝を安全な体位(姿勢)と考えるのが一般的であったが、最 近は国際的な文化の交流や、生活様式の変化に、母親の育児への関心の高まりもあって、うつぶせ 寝が一般家庭の中に急速に普及してきた。

 このような状況は単なる習慣の模倣ではなく、歴史的な変革とさえ思われるので、日常診療の中 でうつぶせ寝を実施している小児科医の立場から、健康な新生児・乳児についてうつぶせ寝・あお むけ寝の長所・短所を記述した論文、および体位によって起こる生理解剖学的ならびに行動状態の 変化、筋肉や運動発達に及ぼす効果、あるいは発達心理学的影響または、乳幼児突然死症候群(S IDS)と体位などに関する多くの文献を調査しできたが、その結果および重心計ピドスコープを 使用して、背臥位と腹臥位による新生児の重心の位置、重心の動揺のしかたとその面積、およびか らだがガラス面に接着している部位と面積を計測し、泣き声も同時にデータレコーダに記録して行 った演者らの新生児の姿勢制御に関する研究からは、うつぶせ寝があおむけ寝に劣る、あるいはう つぶせ寝がより危険であるというデータおよび理論的根拠は見当たらない。

  結論は「是」である。したがって、生活様式の洋風化に伴って、一般家庭の母親が欧米の育児習 慣であるうつぶせ寝こ興味を示し、スムースに普及する状態は決して異常ではなく、障害がふえる 危換もない。たとえ、それが乳児期の単なるメリットあるいは母親の育児願望を満足させるもので あっても否定する理由はなく、選ぶのは母親である。守るべき注意を与え、不安なく実施できるよ うな助言と指導こそ、現在、母子保健あるいは育児指導担当者に求められているものと認識すべき である。

日赤医療センター未熟児新生児科



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